Wanton Book Review 1998-03

役に立たないブックレビュー

最終更新日 : 1998 年 09 月 13 日

タイトル : 土壇場の経済学
    作者 : 青木 雄二 / 宮崎 学
  発行所 : ( 株 ) 南風社
  発行日 : 1998 年 08 月 10 日
      版 : 初版
    定価 : 1,500 円
    ISBN : 4-931062-16-4
    分類 : 解説 ( 文庫 )
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☆☆☆☆☆

金融関係の大手銀行を筆頭に街金融までのピラミッド構成、金貸しとしての動きなんかがよく分かる本です。基本的にみんな金貸しね。「ベニスの商人」なんて可愛いもんだわ。
銀行の幻想ってのは昨今の貸し渋りなんかが、新聞などでも報道されますから、正体がばれてきてますけどね。

作者は、マンガ「なにわ金融道」の青木雄二氏と「突破者」の宮崎学氏です。宮崎学氏は“ゼニ”、それにまつわる人間の裏側を十分以上に見てきた方ですね。「なにわ金融道」ってほとんど読んでないんで知らないんですけど、朝日新聞の土曜版で連載している「なにわ経済学」しか知らないや。

基本的に貧乏人は搾取され続ける立場でしかないんだから、くだらない誇りなんか捨ててしまえば、借金なんて恐くないぞって事ですが、悲しいかな凡人にはその一線が超えられないですよね。そこまでバッサリ思い切れるかどうかが、一般凡人とトッパの違いなんでしょうね。
読んで損はない本だと思います。そういう事態に自分が当事者にならないように注意する意味でもね。
経済ではなく、本の中でも書かれている言葉“ゼニ”ってニュアンスが合っている内容です。
ローン・クレジットなんかは、貧乏人から長く搾取するための資本側の手段にすぎない ... なんとなく、そう思っている人は多いだろうけど、こうはっきり書かれるとスッキリしますね。

所詮、貧乏人は“ゼニ”の奴隷なんです。資本家に搾取される事にしか存在意義なんて無いんです。あなたも私も貧乏人。

最後の方で、青木雄二氏が「なにわのマルクス」を自称するだけあって、原始共産制みたいなのが理想だ ... なんて話が書いてありましたが、この部分だけがそれまでのシビアな内容と異なっていて、なんか面白いですね。
人間が欲望を捨て切れない以上、無理な話ですね。それを超えようとするとマンガ「国民クイズ」みたいになってしまうもんね。

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タイトル : 大正時代の身の上相談
    作者 : 大田 敦子 編
  発行所 : ( 株 ) カタログハウス
  発行日 : 1994 年
      版 : 第 1 刷
    定価 : 1,456 円 ( 1,500 円 )
    ISBN : 4-905943-16-7
    分類 : エッセイ ( 文庫 )
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☆☆

大正時代の読売新聞に設けられた「身の上相談」を分類して集めたものです。デモクラシー、エログロなどなどの時代ですね。
ははははは。基本的に人間って何も進化してないですねぇ。
情けない奴はいつの時代も情けないし、プライドだけが高い奴はいるし。
最近の若い奴等はって話はできないですよね。これじゃ。今、こういう事言う人達って、少なくともこの本に身の上相談していた人達より年下なんだもんね。

処女信仰っての若干クローズアップされていて、現代との違う部分みたいな取り上げかたをしていますが、そんなに違うもんでしょうか ?
この時代に読売新聞を購読して投書できる人達って、都市部に住んでいる比較的恵まれた層じゃないのかな ? まだ、農村部なんかは貧困などの問題もあったろうし。通い妻、通い夫、夜這いなんて風習が生きていた地方もあるんじゃないでしょか ? 一概にこれが大正時代の一般的な人達だって話にはならないでしょうね。

こういうのって続けて山のように読むと辛いものがありすね。

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タイトル : 魔女の 1 ダース
    作者 : 米原 万里
  発行所 : 読売新聞社
  発行日 : 1996 年 08 月 24 日
      版 : 第 1 刷
    定価 : 1,359 円 ( 1,400 円 )
    ISBN : 4-643-96055-8
    分類 : エッセイ ( 文庫 )
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☆☆☆☆

副題が「正義と常識に冷や水を浴びせる 13 章」だって。冷や水を浴びるほど読むほうがウブじゃなかったですけど、面白いです。 (^^)
通訳という仕事から言語の違いを通して、概念の違い、文化の違い、食の違い、同音異義のおかしさなどを「○○の○○人」というタイトルで書かれています。
基本的に考え方としては近いようで「ふむふむ」と妙に納得しながら読めてしまいます。

シモネタ系は好きです。シモネタ系はいかなる言語においても語彙が豊富だそうで、身近な物事をあらわす単語は、これまたいかなる言語においても音節数が少ないのだそうです。で、音の類似が多くなる確立が高くなり ... 例を少し書くと
母親を言い表す「かかぁ」はロシア語の音で「カカア」の意味は「うんこ」
日本語の「エビス」はロシア語での意味は「 fuck 」。エビスビールはあんがいインパクトがありますね。(^^)
日本語の「カツオ」はイタリア語で「男根」。カツオのたたきなんて凄そうですね。これはたしか高斎正氏の「ホンダが F1 に復活するとき」って小説で主人公の名前がカツオでこんな話題があったような気もします。
日本語での民謡などの合いの手「ホイホイ」という音に近いのがロシア語では男根を意味する俗語の響きと非常に近いそうです。その形容詞が「フヨーヴィイ」で、ホテルなどにある「芙蓉の間」などで使用されている「芙蓉」の発音に近いそうです。日本には経済グループで「芙蓉グループ」なんてのもありますね。俗語で解釈すると「ちんちんグループ」ですね。
あと通訳ならではの話題で、日ソのシンポジウムでの人物紹介で、「社会主義労働英雄、陸軍大将シリミエタ同士」だったなんて話しもあります。そういえば昔なんの人だか忘れたけど「マンコワスキー」って人がいたなぁ。来日して NHK に出てほしいなぁと思った記憶があります。

シモネタの文章を費やしてしまいましたが、これ以外の話の方が多いので勘違いしないでね。 (^^) 文化の違いは面白い。だけど理解しあうのは大変だなぁ。

文化や環境が異なると動作・考え方などへの評価が変化し、大熊一夫氏の「ルポ・精神病院」でも触れらているように精神病などと評価されてしまう恐ろしさがありますね。旧ソビエトでは自由化運動する人はどこか精神が病んでいるからだ ... それも文化 ( その社会での一般通念 ) だと言われてしまえば、それまでですけど。
普遍的な話題ってシモネタだけかしら ? (^^;

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